2017/05/09 09:57
2017.05.08

自転車の最大の敵は向かい風と横風の攻撃です。
最近のロードは軽量なうえ、上に乗っかっている僕も小型軽量ですから、その被害は甚大かつ深刻な結果になります。

思い返せば「南伊豆での強風事件」、そしてつい最近の「西伊豆スカイライン横風事件」…懲りたばかりなのに風の心配を微塵もせずに出かけてきた今回でした。
西伊豆はC60+RACING ZERO CARBON WOのコンビで走りましたが、南伊豆は今回と同じ仕様でした。あの時のブログにも書きましたが、もしもBORA ULTRA 50だったらあの時も今回も走るどころか押すこともできなかったと思います。

14磐梯吾妻スカイライン
磐梯吾妻スカイライン
天狗の庭を抜けてしばらく進んだ頃、下から吹き上げてくる風と正面から吹きおろしてくる風が少しずつ威力を増してきました。
山の天気はなめてはいけないとつくづく思い知った今回ですが、いったん止んだように見せかけた風が突然吹き募ってきます。ああいうのを突風というのでしょうか。
この頃はまだ甘く見ていて、飛ばされそうになる自転車を股の間に挟んで撮影を楽しんでいました。

15磐梯吾妻スカイライン
磐梯吾妻スカイライン
上りが一段ときつくなり、その向こうはいきなり空が広がっているというカーブの地点でのことです。
太腿でフレームを挟んで眼下にカメラを向けていたその時、ご~っという音がしたのではないかと思われる一陣の強風!
激しい横風を受けて転倒しそうになりながらこらえましたが、太腿の間の自転車をさらっていきそうなさらに強い横風にたまらず自転車もろとも吹き倒されました。
足元を見るとフロントのチェーンリングが右足ふくらはぎ下に激しくぶつかって血が滲み、チェーンのオイルで周りが真っ黒になりました。
それでもこの風は一時のことだろう。吹き始めた風はいつかしら止むんだと嘯いていました。
しかし風は激しさを増すばかりです。それまで様子を見ながらちょっと走っては歩きまたちょっと走っては歩くを繰り返したいましたが…

浄土平まで5㎞の立札があるあたりからは乗るどころか、歩くこともできません。左側は深い谷、超軽量の僕は吹き落されるのではないかと恐怖心が募ってきました。
街中なら風で飛ばされたものが頭や体に当たって事故になるところですが、日頃から吹き飛ぶものはすべて吹き飛んでしまっていると思われるこの地、ものが飛んでくる心配はあまりしませんでした。もっともそんな余裕はなく、かりそめにも何か飛んできて当たれば死ぬかもしれないし、そのはずみで谷底に転落してしまうかもしれません。

自転車の経験が浅いとはいえ、経験したことのない風でした。磐梯吾妻スカイラインはその名の通り、尾根とは言わぬまでも見通しがいい吹きさらしの真っただ中を走る道路です。
高い山の尾根だったら完全に谷底に吹き飛ばされるレベルでした。

16磐梯吾妻スカイライン
磐梯吾妻スカイライン
確か天狗の庭あたりで地元のローディーと思しき若者が挨拶をして抜いていったのですが、この辺りで前方から恐怖でひきつったような顔でじりじりと慎重に下ってきました。福島へ向かっての下り車線は山側だから乗れたようなものでした。
谷側だったらよほどの巨漢で重い人か命知らずでなければ自転車にまたがることはできません。

17磐梯吾妻スカイライン
磐梯吾妻スカイライン
山の風は変拍子のように予想がつかない吹き方をするものだと知りました。ガードロープにしがみつき、岩陰に自転車を抱えてうずくまらなければならなかったその直後、ほんの一瞬ピタっとやんだりします。がそれはあくまでも一瞬のこと。
命の危険を感じたサイクリングは何度かありましたが、見えない風がこんなにも恐ろしいとは知りませんでした。
空を見上げれば長閑な春の青空!しかも流れる雲がないから風を目で確認できません。空にぽっかりとに浮かぶ雲に動きがないということは、空高いところではなく山肌に近いところを吹き荒れる風だったのかもしれません。

17a磐梯吾妻スカイライン
磐梯吾妻スカイライン
先日の戸隠からの帰り以上に自転車を捨ててしまいたいと思いました。いや実際自転車を守っていたら死ぬかもしれないと思いました。
押し歩きと言っても、自転車は45度以上寝かせてハンドルはしっかりと握っていました。
その時吹き付けてきた強風に自転車のリアが舞い上がってしまいました。手を離せば紙のように天狗の庭の方へ飛んで行ってしまったかもしれません。
腰をサドルに当ててリアが吹き上げられないように押さえつけましたが、その時サドルが押し返してくる圧力は数十キロに及んだと思います。軽量なロードや貧相な体格の僕は丸ごと谷底行きになっても不思議はありませんでした。
ガードレールに縮めた体と自転車を押し付けるように預け、恐れおののきながらガードレールにつかまっていた瞬間もありました。
しかし…
いつもの悪い癖で「そのうち風も収まるさ」とじりじりと進み続けた結果、この時には進むも退くも地獄のような位置にいました。

18磐梯吾妻スカイライン
磐梯吾妻スカイライン
もはや自転車は乗り物ではなく風圧を受けるための邪魔ものでしかありません。トキちゃんに教えてもらったアドベンチャラスなブログの一節が頭をよぎりました。自転車を手放さなかったら命が危ない…そこで自転車の遺棄を決意したという下りです。
貧乏性でなければ置いてきたかもしれませんが、ktyさんやトキちゃんが拾いに行くかと思うとそれもできません、(<まだそんなこと言ってるw)

19磐梯吾妻スカイライン
磐梯吾妻スカイライン
そんな状況下でなんで写真を撮るか!?と言われそうですが、それも承知の上で命がけで(さほど大袈裟ではなく)風下の壁やガードロープに寄りかかって、あるいは自転車を抱えてしゃがみこんでシャッターを切りました。
構図もへったくれもなく、この怖さをビジュアルで残しておきたかったのと、こういう切羽詰まった危うい状況にいる自分が結構好きだったりするからです。
冒険家が平穏に暮らしていると生きている気がしなという、常人にはうかがいしれない貴重な瞬間を疑似体験したがっている自分がいたりしました。

この時点で相当にやばいはずなんですが、浄土平を越えれば風がやんでるに違いないと根拠なく楽観視していたのも事実です。
こうして無事に帰ってきたから言えるものの、一人で登山にはまり込んだらいずれは遭難の憂き目を見るに違いなく、自転車に留めておいてよかったと思っています。

20磐梯吾妻スカイライン
磐梯吾妻スカイライン
浄土平が近づくにつれて風は一層激しさを増し、当然ながら自転車など一台もありません。一台もないのは普段でも珍しいことではないですが、荒れまくっている今日はここにいる方がおかしい。
地獄谷から浄土平までの上りでは立っているのもやっと、何度道端にうずくまったかしれません。

浄土平のレストハウスが閉じていたらどうしようと思いつつ駐車場まで上がってきました。すると2Fの天井に蛍光灯が光っているのが見えました。やったやった!
念のためにバスの時刻表を見たら一日に数本しか出ていないうえに、その上にですよ、バスサービスは土日祝日だけ!バス停の柱を蹴ってやりたい気持ちになりました。

自転車をレストハウスの頑丈な雨どいに繋いでいるとルーフに自転車を4~5台積んだメルセデスの大きなワンボックスが入ってきました。
"ああ、いいなぁ…こういう時はやっぱりクルマだよな"と思いながら、這う這うの体でレストハウス内のベンチに荷物を下ろして初めて途方にくれました。遅すぎる!

"あっ、そうだ!こういう時に自転車引き取りサービスの保険を使えばいいんだよw"とスマホを取り出したらば圏外! AUのバカ!だからNTTドコモから替えなきゃよかったんだ!と持って行き場のない怒りがこみ上げてきました。

そこへ若い女性と体の大きな男性がニコニコしながら近づいてきました。
「ここまで自転車で上ってきたんですか」と若い女性。ええ、まぁという感じでご返事しながらも、一人で途方に暮れていたところへ話しかけてくださったのが実に嬉しくて、風止みませんねぇ、歩くことも立っていることもできませんよね、これじゃぁ自転車で下るのは自殺行為ですよね、ああ困ったなぁなんて話していました。

21磐梯吾妻スカイライン浄土平
磐梯吾妻スカイライン浄土平
自転車に乗るとは知らなかった若くてきれいな女性といかにも人懐こい笑顔の男性に話し相手になっていただいていると、実はお二人とも自転車には浅からぬ因縁というか関係をお持ちの方だということがわかりました。大型のメルセデスに自転車を積んでいらっしゃったお二人でした。

22磐梯吾妻スカイライン浄土平
磐梯吾妻スカイライン浄土平
財布を探ると名刺があったのでそれをお渡しして、自己紹介代わりとさせていただきました。
お返しにいただいた女性の名刺を拝見したら、なんとお仕事は「Sports MC,DJ、Sports Announncer、TV Navigator、Narrator」と肩書にありました。
男性は名刺の持ち合わせがなくて…と恐縮なさっていましたが、こちらはまさに自転車業界でお仕事をしている方でした。
Polygon Bikes Japanの中枢にいらっしゃる方(代表)でした。機材に疎い僕も知っているPolygon Bikesです。MTBのイメージが強かったのですが、現在はロードも手掛けているのですね。
宣伝めいたことは一切おっしゃらず、絶えず笑顔を絶やさない実に感じのいい方でした。

ふと気がつくと件の男性は外に出てクルマのリアゲート開けて何かしていらっしゃいます。

やがて戻ってきて「どこへ下りますか。どこがいいですか」と聞いてくださいました。僕の自転車を積んで駅まで連れて行ってくださるというのです。
本来なら多少遠慮してしかるべきところですが、あまりにも嬉しくてご親切に飛びついてしまいました。

23猪苗代駅
猪苗代駅
結局猪苗代の駅まで乗せてくださったのですが、その短い道中ながら、なんと話が弾んだことでしょう。
僕も自分のことを素直に話し、お二人も住まいや活動の拠点、それにまつわる人間関係など愉しく聞かせてくださいました。お二人とも率直な人柄で、それこそあっという間に猪苗代駅に到着しました。
ほんの短い時間なのにお別れするのが惜しくて、その前に写真をたくさん撮らせていただきました。

24猪苗代駅
猪苗代駅

25猪苗代駅
猪苗代駅

26猪苗代駅
猪苗代駅

27猪苗代駅
猪苗代駅

28猪苗代駅
猪苗代駅

29猪苗代駅
猪苗代駅
数々の人様のご親切にすがって生きてきたわけですが、中でも今回は感謝してもし足りない経験であり、帰宅して思い出しても愉しくて凝縮された時間でした。
必ずいつか再会したいと心に誓いました。

過去に旅先で知り合った思い出が消えてしまわないうちに、その方たちが住む足利や熊谷にでかけて繋がりを新たにできた今年でしたが、今回も是非その経験を活かしたいと思います。

お二人には本当にお世話になりました。ご親切は決して忘れません。
予定の5分の1も走れない今回のサイクリングでしたが、それを補って余りある素晴らしい出会いに感謝あるのみです。自転車旅の良さを(危険もですがw)心から実感した一日でした。


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2 Comments

  • びび 

  • デローザさんー!!
    よくぞご無事で!!
    ケガは大丈夫ですかー?!
    写真からは想像も出来ない狂風だったのですね!
    いや、妨げるものがないからこその狂風ですね。
    山肌の木々はそこでの生活を諦めたのでしょうねー
    そんな過酷な時ですら、あさぎりさんとトキコーチを思い浮かべるとは(笑)
    自転車いつの間にか拾いに来ている二人がイメージ出来ます(笑)

    私も幾度となく風の経験しました。
    下りでいきなり後輪をグワンと持っていかれる瞬間。
    フェーイ!( ̄□ ̄;)!!と思いますよねー
    トキコーチは「経験から学べ」と思っているのか、「そんなの当たり前」と思っているのか。。。
    ぜーーったい突風で落車してる人いますよ!

    にしても、素晴らしい方に救われましたね!!
    何故かれらはそこに居たのでしょうー
    本当に良かった良かった!!



  • 2017/05/10 06:54 | URL 
  • shimagnolo 

  • ビビさ~ん!(笑)
    ありがとうございます。強風に気に入られているらしく、しょっちゅう現れるのですが、今回ばかりは寿命が縮む恐ろしさでした。残りが少ないので、縮むのはあまりありがたくありませんし、風で谷底に放り込まれるのはさすがに嫌です。
    谷底は、トキコーチにいじめられたビビさんや僕が自転車を投げ込むところでしたね。今のところ二人とも自転車を手放さずに済んでいて幸いです。ww

    あの過酷な状況でktyさんとトキちゃんを思い出したのは事実です。「こんな状況をブログに書いたら何を言ってくるんだろう…」と。僕のブログを隅々まで読んでくれている二人のツッコミは日に日に程度が悪くなっています。ww
    そんなこともあって、二人のニヤニヤする顔があの極限状況でも浮かびました。

    ビビさんも風の洗礼を受けたことがあるんですね。もしもトキちゃんが後輪を持って行くような風を当たり前だと思っているなら、今度厳しく言っておかないとですね。あの人は経験も力もあるけど、我々は経験も浅いし、か弱いということをよく言って聞かせましょう。

    それから、どうにも手の尽くしようがないあの場所に現れたお二人が、僕の危険を心配してクルマで送ってくれたことにはいくら感謝してもし足りないです。
    同様にビビさんにもご心配いただいてありがとうございました。

    時間がとれて元気な時に平地を愉しく走りましょうね。6月になったらktyさんがそんな企画を立ててくれるかもしれません。前回のような厳しいコースにしないように、彼にもよく言っておきますね。
  • 2017/05/10 22:14 | URL 

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Author:shimagnolo
2017年、ついに迎えてしまった"古希"
年々の衰えと戦いつつも、ロードレーサーでのつながりを機に写真の世界にもデビューさせてもらいました。六十の手習いをはるかに凌ぐ超遅咲き!
様々な面でペースを合わせて年齢差を埋めてくれる若い友だちに感謝しつつ、今しばらくご一緒させていただきたいと思う日々です。

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