2017/06/10 15:41
2017.06.09

何でも忘れやすいのですが、扉峠から美ヶ原への道が厳しいことは忘れられません。
何がよくないって、本格的な上りにかかる前にアップダウンを繰り返し、結果やや標高を下げたところから本当に厳しい上りが始まるところです。
上り返さなければならないことがわかっているときの下りほど虚しいものはありません。この虚しさを知らなかった初めての頃に戻りたい…とまぁ、何でも忘れてしまうわけでもないのです。

扉峠を出発したのは間もなく4時になろうという時刻。走るのが遅い上に、止まっては写真を撮っているので、こんな時刻になったのは誰のせいでもありません。
あたりには降雨の前兆のような冷たい風が吹き始めました。多少は迷ったものの、先に控える辛い上りを覚悟し、雨に降られることも覚悟しつつ林間の道を気持ちよく進みます。

少し進むと雨がぽつぽつと落ちてきました。次第にアスファルトに大きな雨のシミが目立つようになってきました。かなり大粒の雨ですが、密度はそれほど高くありません。
戻るなら今だぞ!と自分に言い聞かせますが、その通りになったことはありません。戻るのは天候などのせいではなく、気持ちが折れた時と決まっています。なぜかこの時落ちていた気持は持ち直していました。

和田峠への分岐点まで来たので、これが戻る最後のチャンスでした。しかし松本まで50数キロの表示でした。これでは戻れない…
しかしこの分岐点からの上り勾配は尋常ではありません。朝から走りっぱなしな上、全然上れない身には実に厳しい上りと言うほかありません。
勾配はほぼ10%が続きます。8%ほどに落ちると楽に感じるほど。時には11%を超えたり…

31美ヶ原へ激坂続く
美ヶ原へ
既に疲労困憊して上れないのに引き返さなかった自分を責めずに、"こんな道路を作ったやつを目の前に引きずり出して蹴ってやりたい!"と、あらぬ方に恨みが向きます。
普通じゃないです。

32美ヶ原へ激坂続く
美ヶ原へ
写真を撮るついでに休みたいところですが、時間が押しています。この時すでに16時半でした。山本小屋に到着するのが17時を過ぎることはないにしても、そこからの徒歩の区間が長い…へたすると2時間はかかるかもしれません。
雨が降ったらさらに無駄な時間を消費することになります。
そうなったら松本発20時のスーパーあずさに乗り損ねる危険もなしとはしません。そうなると帰宅も危うくなります。"泊まればいいか…"

33美ヶ原へ激坂続く
美ヶ原へ
それでもつい止まって写真を撮ります。写真を撮りたいからと言うより、止まらずにいられないほど走れない状況でした。

34美ヶ原へ1900m
美ヶ原へ
ついにあと1㎞も残さない地点では押し歩きまでする事態になりました。こういう事態が予想できなかったということは、「いつでも初めて同然!w」と言われても返す言葉がありません。(^^;

35美ヶ原第1駐車場
美ヶ原:山本小屋 ふる里館
何とかたどり着いた「山本小屋 ふる里館」。前回はここでちょっと飲み食いのついでに休憩したのですが、今回は素通りです。

36美ヶ原王ケ頭へ
美ヶ原:王ケ頭へ
そして第2駐車場があるホテル山本小屋のある地点ですが、この先は押し歩きをしなければなりません。仮に誰も見ていなくてもロードで走ることはできません。無理やり乗ったとしても小石でタイヤがバーストでもしたら万事休すとなります。
しかし幸いこの時雨は止んでいました。

37美ヶ原王ケ頭へ
美ヶ原:王ケ頭へ
ところがこの時、安堵感を打ち消すように遠雷が轟いてきました。この後激しい雨が降るのは必定でしょう。既にこの時濡れる覚悟もできていましたし、万が一の時は泊まることも視野に入れてました。

38美ヶ原王ケ頭へ
美ヶ原:王ケ頭へ
二組のカップルがいましたが、彼らも傘を持っていないようです。これからどうするのでしょうか。
1組は呑気に美しの塔で鐘を鳴らしています。

39美ヶ原王ケ頭へ
美ヶ原:王ケ頭へ
そしてもう一組は牛と戯れています。

彼らをやり過ごすと一際大きな雷鳴が轟いてバラバラと雨が落ちてきました。もはや戻らないと決めたので人ごとのようにカップルの方を振り返ると、大急ぎで駐車場に向かって走っているところでした。

自転車を引きながらとぼとぼと歩いていく砂利道を「王ケ頭ホテル」の送迎バスが行き来しています。
やがて前から軽トラックがやってきて、濡れて歩いている僕の脇に止まりました。
「どこまで行くだ?」と声をかけてくれたのは、おそらく僕よりかなり年上の方。「○○じゃぁ雹が降ってるだよ。雷にゃぁ気をつけなよ。あれは上からじゃなくて横から来るから~」とご親切な言葉。
お礼を述べて、とどろく雷鳴に首をすくめながら雨の中をずんずん進みます。

40美ヶ原王ケ頭へ
美ヶ原:王ケ頭へ
山本小屋からは近く見えた王ケ頭ホテルですが、道は大きく迂回しているので距離はおよそ3㎞もあります。どう進んでもずぶ濡れになるのは避けられません。

今日のカメラもレンズも「防滴仕様」ではないので、この時を予想して捨てずに持っていたコンビニのレジ袋に収めました。我ながらずいぶん気が利いているじゃないですか。w

小降りになるのを狙って何枚か撮りましたが、シャッターを押すだけです。なのにフルオートに切り替えるのを忘れていました。結果はあんまり変化がありません。orz

41美ヶ原王ケ頭ホテル雨雲の中
美ヶ原:王ケ頭ホテル
雨雲の動きは実に素早くて、こちらが止んだと思ったら、さっきまで見えていた「王ケ頭ホテル」はすっかり雨雲の中。今は何も見えません。

42美ヶ原王ケ頭ホテル雨雲の周辺
美ヶ原:王ケ頭ホテル
横を見ると雨がやんで後方の山々がはっきりと見えてています。

43美ヶ原王ケ頭ホテル
美ヶ原:王ケ頭ホテル
ホテルにやってくるとさっきの雨雲は丸ごと移動したものの、やや不穏な曇り空です。
写真を撮っていると従業員らしい若い女性がホテルの前庭を歩いた後こちらの方にやってきました。
どちらからともなく挨拶をしました。

「虹が見えるといいなぁと思って出てきたんですよ」と言う若くて感じのいいチャーミングな女性でした。
ホテルのロケーションが素敵なこと、周囲の激しく変化する天気がドラマティックであること、夜明けや日没のころはさらに素晴らしいと思われることなどをお話しし、いつか泊まりたいと言うと、その女性はやはりホテルの従業員の方でした。
「このホテルにアルバイトに入ったばかりなんですけど、素敵ですよ。是非お泊りください。昨日試食させていただいたんですけど、お食事もとてもおいしいですよ」とおっしゃいました。
「実は友だちがこちらに予約を入れているはずなので彼から話が聞けると思っていましたが、こうして直にお話が聞けて安心しました。友だちにも伝えておきますね」というと、予約した人の名前、人数は何人くらいなのか、さらには僕の名前もお尋ねいただきました。
写真撮らせてもらえませんか」と図々しいお願いしたら、「いいですよ。ありがとうございます」と言って2枚撮らせていただきました。こちらでは公開できませんが、予約している友だちには、名前とともにお顔を覚えておいてもらいたいと思うので送りますね。
宿泊予定のお友だちは、実際にホテルに泊まった時には彼女に一言声をかけてあげてくださいね。

44王ヶ鼻へ
美ヶ原:王ケ鼻へ
件の女性が仕事にに戻った後、ホテル前の谷から雲が湧き上がってきました。時間がないとは言うものの、明るいうちにここへ来ることができたので、王ケ鼻まで歩いていくことにしました。

45王ヶ鼻へ
美ヶ原:王ケ鼻へ
王ケ鼻へと向かう尾根の左側の空はまだ荒々しい雲に覆われています。

46王美ヶ鼻へ
美ヶ原:王ケ鼻へ
一方右側には牛たちが草を食む小さな放牧場があり、その向こうに切れ込んでいく谷からも雲が湧いています。

47王美ヶ鼻
美ヶ原:王ケ鼻
王ケ頭ホテルから1㎞あまり、王ケ鼻へと到着しました。どこか最果てのような雰囲気が漂っています。子供のころに見た映画「楢山節考」の姥捨て山の一場面を思い出しました。

48王美ヶ鼻松本市街
美ヶ原:王ケ鼻
ふと左下を覗くと松本市街が広がっています。「楢山節考」の世界は儚くも露と消えました。

49王美ヶ鼻
美ヶ原:王ケ鼻
でもやっぱりどこか漂う最果て感が不気味です。しかし王ケ鼻の上空に雨雲はありません。怨霊が念力で雲を払ったのでしょうか。w

50自然保護センターへ
美ヶ原:自然保護センターへ
自然保護センターに向かってもと来た道を引き返すと正面には雲に巻かれる王ケ頭。手前は雲間から差し込む明るい日差しに輝く木々。雲と光の競演が至る所で見られましたが、生憎カメラマンが…。

51自然保護センターへ
美ヶ原:自然保護センターへ

52自然保護センターへ王ヶ頭を振り返る
美ヶ原:自然保護センターへ
自然保護センターへ向かう道から振り仰いだ王ケ頭です。
美ヶ原から王ケ頭に至る高原が、日がな穏やかな日差しで満たされることはあるのでしょうか。僕の数少ない経験では、たとえそんな瞬間が訪れたとしても、次の瞬間に暗転する不安が消せません。

53松本へ
美ヶ原から松本へ
自然保護センターからはほんの少しの上り返しを除いて長い下りが続きます。ヒルクライムレースが行われる道ならではです。
西日が湧き上がる雲を透かせて差し込んできます。

54松本へ
美ヶ原から松本へ
見たことのない光景に何枚か続けてシャッターを切りました。その時左の草むらで1羽の雉が甲高く鳴きました。首から上を出してこちらを見ていました。

55松本へ
美ヶ原から松本へ
次のコーナーでは右からシカが飛び出し、左側の谷へと軽やかにジャンプしながら降りていきました。まだ小鹿の様でした。

56松本へ
美ヶ原から松本へ
前回不安を抱えながら初めて下った真っ暗闇の中、右側から大きなシカ2頭が目の前を横切ったことがありました。事前に藪を漕ぐ音に気づいて速度を落としたおかげで衝突は回避できました。

今日も結局山中で日暮れを迎えてしまいました。
松本発20:00のスーパーあずさがあることを事前に知っていたばかりに、年とスキルを考えないかなりな速度下ってしまいました。
結果的にスーパーあずさにぎりぎり間に合ったとはいうものの、あらかじめ発車時刻がわかっていると危険を承知で急いでしまう僕には、いつも通りの出たとこ勝負が合っているようです。
次回からはこれまで通り、通常営業で気の向くままに走ることにします。
賢明な普通の人は最初から計画的に走るのですね。
バカは死ななきゃ治らない…とならないためにも次回からは急がない旅で!

※帰路のあずさ車内で50代の三人組の方と愉しく語り合えました。いずれいつか紹介したいと思います。


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Twitter : @pa_hoehoe

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shimagnolo

Author:shimagnolo
2017年、ついに迎えてしまった"古希"
年々の衰えと戦いつつも、ロードレーサーでのつながりを機に写真の世界にもデビューさせてもらいました。六十の手習いをはるかに凌ぐ超遅咲き!
様々な面でペースを合わせて年齢差を埋めてくれる若い友だちに感謝しつつ、今しばらくご一緒させていただきたいと思う日々です。

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